CREATOR

FOCUS ON LOCALS

チーム ヤムヤムと十勝のつくり手たち

十勝・中札内村に暮らすチームヤムヤムが案内する
ローカルクリエイターの生活とその背景にあるストーリー。

page(後編)

  • Location

    鹿追町

  • Genre

    木彫・指輪制作

食べることと、つくること

話をしているうちに、お昼の時間となった。工房の一角には暖かく燃える薪ストーブがあり、その前のテーブルが高野家の食卓だ。佳子さんは、ストーブの上で温めていた鍋の蓋をとり、お弁当箱におかずを手際よくよそう。息子の峰くんは「どうぞー」と言いながら、自分で端材を削って作ったという箸置きをテーブルの上に丁寧に並べる。その小さな手には、木を大事に扱う気持ちが表れているようだった。工房には峰くんの作業場も用意されていた。

箸を並べ、両手を合わせて「いただきます」。鍋から立ち上る湯気が、この場所でつくられるものの温かみを表しているようだ。そして、ずっと印象に残っていたのと同じように、丁寧にお弁当と向き合う。食卓を囲む家族の姿を見ていて、それは「ペイジ」のものづくりの姿勢そのものなのかもしれないと思った。

 

食事を終えると、風が入るようにと、夕輝さんが壁の一部を開けてクギを打って留めた。目の前に新しい窓ができた。工房は日々の暮らしにちょうどいいように、彼ら自身の手で少しずつつくり変えられている。工房での暮らし自体が、変化し続ける「ペイジ」の作品のひとつなのだ。

「気がつけば昔から、何気なく丸いものを集めていた」

工房内には「丸いもの」を並べた台がある。メガネのフレーム、蛇口の金具、丸い網や、何かわからない部品のようなものもある。その中央には、佳子さんが彫金の技術を使ってつくる指輪が展示されている。もとになる角棒の角を少しずつ削り、断面を丸く仕上げていく。

 

はじめから断面の丸い材料もあるが、機械で均一的に整えられた丸ではなく、やはり手で磨いてつくるのが佳子さんのこだわりだ。作業台にはキャスターが付いていて、寒い日には薪ストーブの近くで、暖かな日は日高山脈をのぞむ窓辺で。工房の中の一番いい場所を移動しながら作業する。

 

「ひたすら丸く削っていく作業が楽しくて、削っていると、時間を忘れて没頭してしまいます」

「遠い記憶に突き動かされているようで、ワクワクするんです」

先人たちから譲り受けた道具を使っていると、オノを振る身体を介して、太古からの記憶が自分に重なるような時があると夕輝さんは言う。

 

「山が遊び場だった小さい頃、シートン動物記に夢中だった頃、ひたすらなにかを作ることに夢中だった頃、これは僕の記憶です。そこに、鹿追の山と暮らしてきたおじいちゃんたちの記憶と開拓の記憶。畑や酪農をしながら熊を彫った八雲の方々の記憶。その道具に残る日本の鉄器造りの記憶。そして、ユーラシア大陸に広がる北方狩猟民族の南端としての北海道の記憶。そこに重なる旧石器時代のオノを使っていた人類の記憶。知るほどに遠い記憶がたくさん重なって、オノを振っていると、土地の記憶に突き動かされているような気がしてワクワクするんです」

今日もまた自分たちだけのページを綴る

目の前の自然と向き合い生きる姿勢には、いつの時代も共通するプリミティブな本質がある。遠い昔から人間が繰り返し積み上げてきた、地球で生きる記憶。そうした人間としての大きな流れの中に、自身の「つくり手」としての体験を刻み込み、受け継いでいくということ。それが、夕輝さんが木を削ることで感じる充足感の根源なのではないだろうか。

 

窓からの見える森や山の存在を身近に感じながら、「つくり手」として自らの手を動かす「ペイジ」のふたり。作品はこの土地の歴史や人間の記憶と重なり、いっそう輝きを増す。「page」という名前は、過ぎていく日常への愛おしさから名付けられた。自分たちが過ごしてきたどの瞬間も、自分という「本」の中に1ページ、また1ページと綴られていく。

 

自分たちの暮らしを重ねる1ページ、そしてそこには、地域の自然や文化、そして人類の記憶などが重ねられ、この場所でしかないページが加えられていくのだろう。この土地でつくること、この場所で彫る姿そのものが、彼らの求める表現なのかもしれない。

Profile

ペイジ

page

高野夕輝・高野佳子

それぞれ現代美術作品の制作や家具製作、店舗や住宅の空間設計などに携わり、2012年、大雪山国立公園の麓の町、鹿追町に移住。「page」を開業し、家具の受注製作、木の道具製作を行う。現在、熊や山などの木彫り制作と、指輪制作をメインに活動。木彫り熊、山の彫刻は、「MEMU EARTH HOTEL」のショップでも販売している。結婚指環は、サンプル確認後、サイズ、刻印を決めオーダー。

 

http://page-hd.com/

 

Profile

チーム ヤムヤム

Team YumYum

山本 学 ・ 山本えり奈

旅をしながら十勝に暮らす、編集・デザインチーム。あいうえお表やカレンダー、イラストマップやパッケージラベルなど、日々の楽しさをデザインする作品を手掛けている。北海道新聞にイラストエッセイ「ヤムヤム移住ごよみ」を連載。十勝毎日新聞社カレンダー「とかちごよみ」製作。Hotel Nupka「旅のはじまりのビール」ネーミング&デザイン。NHK連続テレビ小説「なつぞら」公式コラム執筆など。2019年6月には、2年目の「夏至のピクニックパーティ-育つ庭-」を主催。

 

www.tyy.co.jp

 

NTERVIEW & TEXT : TEAM YUM YUM
PHOTO: NAOKI WAGATSUMA

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