FOOD

EARTH Oven -memu-

資源再読から生まれた大地の蒸鍋料理

食材だけでなく、地域の土・石・植物を活用。
地産地消の先にある、食の資源再読とは?

「EARTH Oven -memu-」は、土や石、植物など身の回りにある資源を活用する蒸し焼き料理。均一に火が通るよう土をかぶせ、釜の温度を保つのもポイントだ。

ローカル・ガストロミーのこれからのあり方を考える

「メムアースホテル」の食のコンセプトは、“資源再読”。ちなみに“資源再読”とは、土地が持つ固有の文化や風土、自然など、日常を取り巻く環境を俯瞰し直しながら、豊かな感性や五感を取り戻す食体験をお客さまに提供すること。「メムアースホテル」では、こうした視点で再発見した十勝の資源やアイデアをメニューに取り入れながら、これからのローカル・ガストロノミーのあり方と可能性を追求しています。

 

2019年8月から提供がスタートした「EARTH Oven -memu-」は、そんなホテルの食のコンセプトをまさしく体現するメニュー。大地をキッチンにしたダイナミックな蒸鍋料理のアイデアは、果たしてどこから生まれたのか? 「メムアースホテル」のシェフである沼田元貴に話を聞きました。

ホテルの近くを流れる歴舟川で釜となる石や薪となる流木を拾う。ホテルの敷地に群生するイタドリやカシワの葉を集めるのも、調理の下ごしらえだ。

テロワールを語る、食を目指して。

—「EARTH Oven -memu-」を始めようと思ったきっかけを教えてください。

 

沼田_ホテルの開業以来、地域で生産されたものを地域で消費する、いわゆる「地産地消」という考え方の先にある、食のあり方って何だろう? ってずっと考えてたんです。例えば、ワインの味わいを語るとき、テロワールって言葉をよく使いますよね。それは、単にワインが作られる「土壌」を意味するではなく、ワインが生まれてくる風土、人、気候など、「環境」全体のことを指します。ブドウの生育する環境が違えば、同じブドウでもワインの味が当然のことながら違ってきます。ワインのように食に関しても、調理法や食べ方も含めて、もっと十勝という風土の固有性を表現できるんじゃないか? そう思って、いろいろと試行錯誤し始めたのが、このメニューを開発しようと思ったきっかけです。

土を掘り、釜を作るのも重要な調理の工程。天候にも左右される調理法のため、試行錯誤を繰り返しながら石を積む。

アイデアの源泉は、ペルーの伝統料理と実験住宅

—具体的にどんな料理なのか教えてください。

 

沼田_簡単に言うと、焼いた石の熱を使い、イタドリや柏の葉の上に食材を並べ、その上に土を覆いかぶせて蒸し焼きにする原始的な調理です。ペルーでインカ帝国の時代から続く、「パチャマンカ」と呼ばれる特別な日に振舞われる神聖な料理があるのですが、その伝統的な調理法がアイデアソースになっています。「パチャ」は“大地”、「マンカ」は“鍋”を意味する言葉で、文字通り地球そのものをオーブンにした料理。十勝の風土を丸ごと味わってほしい。そんな思いも込めて、「EARTH Oven -memu-」と名付けることにしました。

 

—その発想は、どこから生まれたのですか?

 

沼田_実はホテルの宿泊棟である「メーム」からインスピレーションを受けました。建築家の隈研吾さんが手がけられたこの建築は、アイヌの伝統的な民家であるチセをモチーフにしているんですが、地熱を利用した蓄熱式床暖房や膜の間に熱を循環させる仕組みなど、先人の叡智を取り入れながら、それを環境に根ざした先進の住まいとして提案しています。「メーム」のように、土地の固有性や文化を活かした調理法はないかと思案しているとき、ペルーの「パチャンマンカ」のことを知り、挑戦することにしました。

肉はカシワの葉に包んで、釜に入れる。巻くことで、肉に香りが移り爽やかな風味に。

石を集め、枝を拾う。そこから調理が始まる。

—具体的にはどのように作るのですか?

 

沼田_まず、オーブンの代わりとなる石を採取するところから始まります。ホテルの近くを流れる歴舟川には、いい石がたくさんありますし、薪となる流木にも事欠きません。食材を載せたり、包んだりするためのカシワやイタドリの葉は、ホテルの敷地内に自生しているものを使っています。そして、火を起こすために土を掘る。調理はそこから始まります(笑)。ちなみに食材は、十勝内の契約生産者から仕入れた牛・羊・ジビエなどの肉と、じゃがいもやトウモロコシ、ズッキーニ、カブなど、その季節ならでは野菜やハーブを使っています。

 

—調理には、何時間ぐらいかかるのですか?

 

まず火を起こして、石を焼くのに1〜2時間程度。それから、熱の行き渡った石の釜に葉で包んだ食材を置いて、土を被せて蒸し焼きに。ここから3〜4時間程度でしょうか。気がつけば、半日仕事です(苦笑)

「釜を空ける瞬間は、いつも緊張します」と沼田シェフ。滋味深い大地の香りが鼻腔をくすぐる。

大地の香りが最高の調味料になる。

—普通の蒸し焼きと、味は違うのでしょうか?

 

これが驚くほど違うんです。石によってゆっくりと低音で蒸し焼きされることで、より肉の柔らかさや旨味が引き出されるのと、柏の香りと風味が食材に移って、より食材自身のポテンシャルが引き出されるんです。

 

—上手くいかなかったことはないんですか?

 

毎回、その都度、思考錯誤していますね(笑)。その日の天候や気温などによって、釜の温度も変わってきますし、蒸し焼きにする時間も変えています。何せ相手が自然なので、なかなか思い通りにいかないことも多い。ただ、ポジティブに言い換えるなら、それだけ自然の力が入り込む余地がある。大地の香りが最高の調味料になる料理なんです。なので、ぜひゲストの方々にも釜作りから参加してもらって、「EARTH Oven -memu-」のダイナミックな味わいを五感で体験してもらえたらと思います。

 

下記リンクから「EARTH Oven -memu-」のムービーもご覧いただけます。

 

EARTH Oven -memu-:資源再読から生まれた大地の蒸鍋料理ムービー

Profile

沼田元貴

Motoki Numata

メムアースホテル シェフ

1991年帯広市生まれ。和食の料理人であった父の影響で、迷わず料理の道へ。専門学校を卒業後、帯広のイタリアンのスーシェフに。上京し「金田中」での研修後、「MEMU EARTH HOTEL」のシェフへ就任。

Photo_Naoki Wagatsuma

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